暖かく過ごすための試行錯誤:2窓の断熱

投稿者: | 2018-01-10

家がしっかり断熱できているのであれば、暖房を使わずにも暖かさを維持することができます。なぜ暖房が必要なのかといえば、熱が逃げているために、それを補うエネルギーが必要となってくるためです。
日本の住宅の場合には、暖房の熱の48%が窓から逃げていると推計されています(新省エネ基準モデル住宅での推計)。窓際が寒いというのは事実そのとおりで、熱が逃げやすく、いわば冷気がしみ込んでくるためです。上手に断熱をしてあげることで、快適に過ごすことができます。
断熱ができていないと、夜に暖房を切ったあと、どんどん室温が下がっていきます。そして起きるのが嫌になるくらい寒い朝を迎えることになります。断熱ができてれば、エネルギーを使わなくても、暖かく朝を迎えることができます。
 


 

ひのでや温度変化 京都の冬は寒いですが、弊社の事務所も寒いです。こたつがあれば、部屋の温度はどれだけ寒くてもいいのですが、眠くなってしまうのが難点で、最近は普及率も下がってきているようです。
右の図は、弊社事務室の年末12月27日の室内気温と、外気温の変化です。室内気温は、高さ2mの鴨居の上に置いたboshe製センサーで30分おきに計測した温度、外気温は京都地方気象台の温度です。
この日は曇りがちの天気で、終日2℃から5℃程度の寒い日でした。朝の8時から暖房をつけて、夕方6時までの業務時間、20℃に維持したのち、暖房を切ったあとの温度の下がり方がポイントです。
3時間後にはいきなり6℃も低下しています。次の3時間で2℃低下、その後さらに低下して、次の日の朝には10℃にまで下がりました。外気温との差をみると、暖房中は17℃(外気温3℃に対して20℃)だったのが、朝方には8℃(外気温2℃に対して10℃)差となり、12時間で温度を半分維持するだけの断熱しかないということです。
暖房を切った直後には、30分で2℃近く下がっています。この温度低下の速さ(熱のロス)を補うだけ、暖房の熱が必要ということになります。
もし朝方の室内が15℃くらいあれば(熱の逃げが半分くらいであれば)、だいぶ朝でも暖かく感じられるのでしょうが、現在の部屋では3時間でその温度にまで下がってしまいます。これでも、窓の断熱はそれなりに工夫してがんばった結果ではあるのですが、古い建物なのでここまでが限界のようです。
ちなみに、室内温度の下がり方は、断熱性能だけに左右されるのではなく、部屋のなかにどれだけ熱を溜め込む家具やモノがあるかにも左右されます。モノがたくさんあると、長く暖かさが保たれるので快適なのですが、逆に暖房で温め直すのに時間がかかります。

エアクッション(プチプチシート)

  窓の断熱としてホームセンターに一般に購入できるのはエアクッション(俗称プチプチシート)です。空気の層があるために断熱性能が高く、窓面に触っても冷たくないくらいです。窓の大きさに切って内側から貼り付けるのですが、窓断熱用に裏表にシートがあるタイプは、霧吹きで水をつけるだけでぺたっと窓に張り付きます。
シートもいろいろ試してみました。空気の粒が大きいもの、通常のクッション材(値段は安いです)、1枚シートで窓にくっつかないように横縞の出っ張りがあるもの、粒でなく横一線の空気層のタイプののもの、厚いもの、薄いもの、模様がついているもの。使ってみたところ、出っ張りがあるもの以外なら、どれでも好きなもので構いません。両面がシートになっているもの、また厚いものほど、断熱効果は高く出ます。ただ厚みがありすぎると、内側の窓があかなくなる場合もあります。
結露がだいぶ減りますので、効果は大きいです。ただ、ポリエチレンは赤外線をよく通過するため、カーテンを併用すると効果的です。

カーテンはどう?

窓赤外線 省エネの工夫として「厚手のカーテンで床まで届く方がいい」という話がよくされます。カーテンの何が効果が大きかといえば、赤外線をきちんと反射して通さないという点です。窓の内側の表面温度が外気温と室内温度の中間くらいまで下がるのに対し、カーテンをするとほぼ室内温度が保たれます。窓方向からも輻射熱が少し届くこととなり、寒さが和らいで感じられます。
しかしカーテンで断熱ができているかといえば、そうではないのが厄介なところです。カーテンレールと窓枠の間には隙間が空いていますし、引きずらないかぎり、カーテンと床の間も隙間があります。カーテンの横もすきまです。外からは窓面が冷やされるため、カーテンの裏側は、冷たい空気となります。室温と10℃の温度差であれば、空気の重さは3%以上も違ってきて、冷たい空気が吹き下ろしてくることになります。密閉されていればまだしも、数ミリの隙間があれば、風が感じられる程度の冷気の流れとなって、床を伝わって吹き込んでくることになります。
窓際の冷気の圧力がどのくらいなのか簡単に計算してみます。2mの高さのサッシで、幅2m、カーテンの裏が2cmの空気が、10℃室温より低かった場合、空気の重さは1.3kg×(2×2×0.02)で約100gになります。重さが3%強違うので、2m×2cmの面積に3gほど床面に圧力がかかっていることに相当します。同じ面積に換算すると、20cm×20cm程度の薄いビニール袋に空気を入れておいた状態で、上に5円玉を載せたくらいの圧力で空気が押し出される程度の圧力になります。
隙間をふせぐのは大変です。手で水をすくうようなもので、相当気をつけて隙間をふさいでおかないと、すぐに冷気は穴をたどって流れ落ちてしまいます。
特に下に隙間がある場合には、勢い良く下から冷たい空気が流れ出てくるため、余計に寒く感じてしまいます。カーテンの下が床に接触していて、横に隙間があると、風が横方向に流れ出るために、人がいる方向に直接風があたらないというメリットは出てきます。ただし部屋が同じように温度が下がることには変わりありません。

農業用のビニールシート(ともかく安いので)

どうせ隙間があいているのならと、なるべく安い材料を探してみました。
新聞紙やダンボールを貼り付けることも効果的でしょうが、部屋が暗くなってしまいます。ちなみにダンボールは空気層のある分、暖かくなる効果は大きいでしょう。夜だけでも窓にかけておくこは有効です。同じように暗くなりますが、夜に雨戸をつけるのも、効果があります。
ホームセンターでぶらぶらしながら探してみたところ、プチプチシートの20分の1くらいの値段で、ビニールシートが何種類か売られているのを見つけました。工事用の養生シートもあったのですが、これはいかにも工事中のイメージがあり、しゃらしゃらと音もうるさくてあまり快適ではないでしょう。ちょうどいいものとして、農業用のマルチとして使われる透明のポリエチレンシートが手頃でした。1m幅で50mの長さがあって1000円弱です。透明でしっとりした感じで、音もうるさくありません。
ポリエチレンなので、赤外線の透過もあり、空気を固定できるわけでもなく、効果が少なそうですが、 2枚めのカーテンとして使うと、窓枠ぴったりにあわせることもしやすく、多少は効果があるようです(2℃程度の温度維持になっていました)。
窓枠を完全に塞いでしまってもいいのかもしれませんが、窓は空けるためのもので、使い勝手が悪くなります。カーテンのように、窓枠の上にテープで貼り付けて、垂らしてあげるとかなり使い勝手はよくなりました。1m幅なので、ちょうど窓の鍵の部分は、のれんの切れ間にあたり、開いて操作することができます。

内窓

最近はホームセンターでも内窓キットが販売されるようになりました。窓だけでなく、専用の窓枠も作って引き戸にすることができます。2年ほど前に、京都府地球温暖化防止活動推進センターの事業で、内窓づくりも行いました。プラスチックダンボールでできており、遠くから見ると製品とも思えるくらいしっかりしていますが、さすがに曲がりが生じて隙間ができてしまうことがあり、最近は曲がりを少なくしたアルミ枠や補強されたものが販売されているようです。
  木枠でアクリル板の窓をつくることも、社員が取り組んでいます。プラスチックダンボールのように空気の層はありませんが、さすが水槽にも使われるアクリルだけあって、きれいで丈夫な仕上がりになります。
手作りの中で、きちんと漏れない空気の層を作れる点では、内窓が一番でしょう。「作った!」という達成感も格別です。

ちなみに、工務店に内窓工事を頼むこともできますが、材料を調達して自分でガラス戸を設置することも、がんばれば日曜大工としてできるようです。LIXILの「インプラス」や、YKKの「プラマード」がメーカー品としてあり、通販などで購入して取り組んでみてください。DIYをサポートしているサイトもあります。

 

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