講演録:ごみ減量のしかた2017 前編

投稿者: | 2017-09-30

2017年9月25日と26日に、大阪市で、ごみ減量推進員向けの講習会でお話をさせていただきました。そのときの話を整理してみました。
ごみ問題への関心は、以前より低くなっているのは確かですが、まだまだ削減をしないといけない大変な状況も迫っています。短い時間で、具体的な削減方法は伝えきれませんが、なぜ取り組むべきなのかを中心にお話させていただきました。
(記事が長すぎて1本で書けないので、前後半に分けて掲載します。後編はこちらです。
 


 

みなさん、こんにちは。有限会社ひのでやエコライフ研究所の鈴木と申します。
少し変な会社名だなと思われた方もあるかもしれません。「エコライフ」と名前があるとおり、家庭でどうしたら省エネやごみ減量ができるかを考え、調査や研究している会社です。自治体や国などといっしょに仕事をしているほか、みなさんのように環境に関心のある市民の方々といっしょに取り組みをしており、今年で17年目になります。社員6名の、こじんまりとした会社です。
日頃からごみ減量に協力していただき、ありがとうございます。今日は、ごみ減量をどうしたらいいのか、いっしょに考えていきたいと思います。
最近は、以前のようにごみ問題が大きく取り上げられることは少なくなりました。最近、ごみとして取り上げられているのは、森友学園に埋まっていたごみ処理費用が8億円というくらいでしょうか。20年ほど前に、焼却炉から放出されるダイオキシンが騒がれていた頃とくらべると、ずいぶん落ち着いています。市民のごみの問題への関心も、以前より薄れているのは確かです。
それでも自治体からの広報では、ごみを減らしましょう、リサイクルしましょうと、ずっと呼びかけが続けられています。「また同じことを言っている」と思い、飽きてしまっている人もいるのではないでしょうか。毎年毎年、もっと減らさないといけない、もっと減らしてください、と言われ続けると、何のために減らさないといけないのか、疑問を感じる人も出てくるかもしれません。
ただ、ごみの問題は決して解決しているわけではありません。ごみ問題をおろそかにすると、あとで大変困る状態になります。まずは、なぜごみ問題に取り組まないといけないのか、というお話からはじめたいと思います。

ごみ問題に取り組むべき3つの理由

ごみ問題に取り組むべき理由、ごみ減量にまだまだ取り組まないといけない理由は、3つあります。たった3つだけですので、ぜひ覚えて帰ってください。
ひとつめの理由は、ごみが「迷惑なものだから」です。
みなさんと同じように、私も「ごみ」が大好きです。「ごみ」という言葉に何か引きつけられるものがあるから、みなさんもごみ減量やリサイクルに協力しているのだと思います。
私が小学生の頃には、こんな遊びをしていました。ごみ捨て場から使えそうなものを拾ってきては、まだ使えるのではないかと分解したりいじったりしていました。動かなかった電卓も、乾燥させただけでちゃんと動いたときには、うれしかったです。また、おやじに取り外してもらいましたが、洗濯機のタイマーはなかなか遊べるおもちゃでした。古紙回収でも、近所のお兄ちゃんたちが捨てた雑誌などを引っ張り出しては、読んでいたものです。工夫次第で楽しめるものが、無料で手に入るというのは、夢のような世界でした。最近は、ごみ捨て場に鍵がかかっていたり、表から見られないように隠されているのが、子ども達の遊び場を奪っているようで、かわいそうに感じます。
さて、話を戻しますが、厳密に言えば、このように活用されるものは「ごみ」ではありません。だれか必要とする人がいるのであれば、その人に渡せば、ごみにはならないからです。本当の意味でごみと言われるものは、だれにとっても不要・迷惑なものなのす。これが「ごみ」の一番重要な特徴です。
生ごみを考えてみてください。家の中にしばらく保管をしてると、腐ったり、ハエがたかったりしますので、なるべく早く家から取り除きたいものです。単に自分の家から取り除くためであれば、隣の家の前に置いてきてもいいのですが、それでは隣の人が怒ります。だって、隣の人にとっても不要で迷惑なものなのですから。じゃあ道ばたならいいかと言えば、まち全体としても、腐ったものが道ばたに置かれていては、いやがられます。自分の家に持ち帰ってくれるような、奇特な方は世の中にはいないでしょう。私もごみは好きですが、そこまでは好きではありません。
そこで自治体が、行政の仕事としてごみを回収して、適切に処理しているのです。みなさんは、自治体が取り決めたごみの出し方を守っていれば、あとは自治体が持って行ってくれ、ごみは目の前から消えてくれます。これで目の前からごみが消えてくれるのですから、とてもありがたい話です。私たちも、目の前からごみがなくなってくれれば、後は自治体の責任だとばかり、何が起こっているのか考えもしなくなります。しかし問題は、その先で起こっているのです。
ごみはたいてい焼却炉で燃やされます。焼却炉の近くに住んでいる人にとってみると、よその人が出した大量のごみが、自分の家の近くまで毎日運び込まれてくることになります。みなが「迷惑なので早く取り除いてもらいたい」と考えているごみです。現在の焼却炉自体は性能がいいので、燃やしても周辺に汚染を引き起こすということはほとんどありませんが、それでも気分がいいものではないでしょう。
もう少し真剣に考えてもらうために、みなさんに少しおたずねしたいと思います。もし、あなたの家の隣に広い空き地があったとして、そこに大型の焼却炉を建てさせてくださいという話になったら、みなさんはどう思いますか。
たぶん、そうですか作っていいですよ、とすぐ答える人はいないでしょう。焼却炉で健康被害は起こらないと説明されて、頭では理解できたとしても、できれば作ってほしくないと思うのは自然なことです。ごみ焼却炉は、残念ながらまだ社会的に歓迎されるものではなく、迷惑施設として認識されています。けれども、ごみが発生する以上は、どこかで処理をしないといけないのも事実です。つまり、あなたが毎回だしているごみによって、迷惑がだれかに押しつけられているというのが実態なのです。
ごみ焼却施設の建設反対運動が盛んだった頃、予定されている焼却施設から半径1kmの範囲ではみな関心が高くても、それよりも遠くに住んでいる人たちは関心がないという話がありました。本当なら、ごみを出している人全員が関係してくる問題なのですが、問題の原因を作っている人たちは関心がなく、一部の人たちに迷惑を押しつけてきたのです。
ごみ焼却炉の名誉のために付け加えさせていただきますと、繰り返すようですが、有害物は基準以下で、健康被害が起こるような施設ではありません。安全な施設なら堂々と作りましょうということで、東京都杉並区では駅前に巨大な焼却炉がありますし、大阪府摂津市では市役所に隣接して焼却炉が作られています。焼却炉が迷惑施設だと認識されている気持ちを否定するわけではありませんが、少しでも受け入れられる施設になってもらいたいとは考えています。
さて、突然ですがここで、ごみ問題を解決する「ヒーロー」がやってきました。そんな迷惑なごみを、何でも処理をしてさしあげます、というヒーローです。多少お金さえ払ってくれたら、みなさんにとって迷惑であり、地域の対立を招くようなごみを、きれいに取り除いてあげます、と。さて、みなさんはどう思いますか。ちょっと話を聞いてみようか、と思った方はいらっしゃいますでしょうか。
ごみの不法投棄(豊島)実は、そうした甘い言葉に頼ってしまった結果としてできあがったのが、こちらの写真です。夕暮れ時の静かな海に浮かぶ小さな島。どこだかわかりますでしょうか。
ここは、瀬戸内海の小豆島の西隣、豊かな島と書いて、豊島(てしま)と読みます。写真の中央に不自然に平らになった場所がありますが、この範囲に50万トンもの不法投棄がされており、最大で高さ50mものごみが埋められました。ごみの野焼きもされ、当時最高濃度のダイオキシンが検出されました。1990年に摘発されるまで、日本中から産業廃棄物が運び込まれたのです。みなさんが直接関わったわけでないでしょうが、不法投棄されたものをみてみると、自動車のタイヤや、座席シートに使われるスポンジなど、みなさんが便利に使っていたかもしれない製品のごみも大量に運び込まれています。
不法投棄の状況こうした不法投棄は、各地で何度も繰り返されてきました。豊島を超える量の不法投棄がされた場所もあります。不法投棄をする悪辣な業者にとってみれば、ごみ処理料金を受け取っていますので、そこで処理する手間を省き、不法にポイ捨てするだけで、手元にお金が残るのですから、なかなかもうかる商売です。あとは、会社を倒産させて、隠しておいたお金を持って逃げれば完了です。うそのようですが、そんな形で不法投棄が過去にはあったのです。
その後始末は大変でした。この豊島の廃棄物と汚染された土は、隣の直島に運ばれて無害化処理された上で、豊島に埋め戻されてきました。かかった費用は500億円以上で、それらがみなさんの税金からまかなわれています。20年弱の期間をかけて、今年になってようやくその処理が完了したところです。
不法投棄は、だれもが「迷惑なもの」と考えているからこそ、甘えにつけこんで起こったものです。お金さえ払えば、あとは関係ないではすまされません。どこまでも「迷惑なもの」であるからこそ、きちんとした処理がされているのか、まで責任をもって見ていかなくてはいけなかったのです。
ちなみに、現在の産業廃棄物処理業者は、このような不法投棄はしておらず、優良な事業者さんばかりですので、イメージで悪者だと決めつけないでください。法律に基づいて、適正に処理を行いながら環境を守る仕事をしていますので、安心して任せられる業者さんを選ぶことが大切です。また不法投棄は、みなさんがふだん出しているごみではなく、工場などから出される産業廃棄物がほとんどです。みなさんが出しているごみは、自治体が責任をもって、適正な処理が行われています。
豊島についても、不法投棄のことばかり話をしてしまいましたが、汚染が起こってたのは、島の西部の埋立地周辺のみで、人家や畑がある場所は影響はありません。食べ物ももちろん安全ですし、活動された地域の方々もすてきなので、ぜひ一度は訪れてみてください。
ごみ問題に取り組む2つめの理由は、「地球環境や子どもたちのため」です。ごみの迷惑は、顔を合わせて言い争いができる範囲だけでなく、地球全体にも広がりますし、何十年も将来にも影響を与えてしまうという、やっかいなお話です。
ごみは燃やすことで、地球温暖化の原因となる二酸化炭素が出てきます。厳密に言えば、石油から作られたプラスチック類を燃やした二酸化炭素が、地球温暖化に寄与する計算になります。日本では家庭から排出される二酸化炭素のうち、ごみ焼却が原因となっている割合は4.8%(2015年)にも達しており、ごみも地球温暖化に大きく関係しているのです。また、燃やしたときに出てくる灰には、吸ったら危険な濃度の重金属など有害化学物質がふくまれています。適切に処理できなければ、汚染物質が地球全体に広がることにもなりかねません。
不要になって、ごみ箱に捨てるときに、私たちはそれを「ごみ」だと考えます。その原料をたどってみると、プラスチックは石油ですし、缶は金属鉱石、紙は森林の木材など、それぞれ地球上の資源を活用して作られているものです。ごみとして捨ててしまうということは、それらの資源を消費してしまうことに等しいのです。地球の資源量は限られていますし、森林も無限に伐採できるわけではありません。
このように、私たちがごみとして捨てることに関連して、地球の資源を使い、地球を汚染し、また地球温暖化問題を引き起こされていくのです。しかも、その影響は、何十年も先になって引き起こされることが多いのです。資源は数年のうちに枯渇するようなことはないでしょうから、現在使っている私たちが、すぐに困ることはなさそうです。けれども、子どもたちや孫たちの世代には、資源が大幅に不足し、地球温暖化も深刻な状況になっている可能性が非常に高くなってきます。いま豊かにくらした結果として、子どもたちや孫たちに問題を押しつけるというのは、恥ずかしいことです。
実際にごみを燃やしているのは焼却炉ですし、石油を採掘しているのは中東などの会社です。私たちが直接、地球環境を壊しているわけではありませんが、私たちが利用し、ごみとして捨てているという時点で、責任を免れることはできません。
そして最後、ごみ問題に取り組む3つめの理由は、「お金がかかる」という点です。
環境問題とか子どもたちのためにとか、心を揺り動かされる高尚な話の後に、何とも打算的と言われそうですが、現実的にはこの「お金」が鍵を握っている場面もあります。
迷惑なものを適切に責任をもって処理するために、どうしても手間とお金がかかるものなのです。
さてそれでは、少しみなさんに聞きたいと思います。ごみを処理するためのお金はいくらくらいかかっているでしょうか。30リットル程度の、ごみ袋としては中ぐらいの袋1つを処理するためにかかるお金として考えてみてください。
ごみを処理するためには、それを集めるためにもお金がかかりますし、焼却工場で燃やすためにもお金がかかります。焼却工場を建設するお金も、ごみ処理のお金として含める必要があるでしょう。
さて、いくらくらいだと思いますか?
 
京都市ごみ処理にかかるお金 これは京都市での推計になりますが、家庭ごみ(燃やすごみ)は1袋180円、リサイクルの場合には1袋360円もかかっています。郵便物では封筒に切手を貼るかと思いますが、同じように考えると、ごみを1袋出すときには、180円分の切手を貼らないと、引き取ってもらえないということです。逆に言えば、ごみ1袋分を減らすことができれば、180円得するということです。そこまでお金がかかっていると実感できるなら、少しでもごみを減らそうかという気持ちになるのではないでしょうか。
もっとも、このお金は出す人が負担しているわけではなく、税金でまかなわれています。ごみを減らしても、出した人にメリットがあるわけではないのですが、みなが協力してごみの量を減らすことができれば、市としての予算の余裕は大きくなります。最近は、自治体の予算も限られています。ごみをみなで減らすことができれば、そのぶん、別の意味あるサービスに使うこともできるはずです。
ごみ削減の努力がされた場合に、一人ひとりにその分のメリットがあるようにする方法として、ごみ袋の有料化があります。いきなり180円では負担が大きいので、1袋あたり30~50円程度に抑えられることが多いです。それでも有料化制度の導入によって、ごみの量が削減できるという成果も認められています。ただ有料化では、相対的に高齢者や低所得者などに負担がかかるなどのデメリットもあり、導入するかどうかは地域ごとにしっかり議論をして決めてください。
ごみを減らさなくてはならない3つの理由は以上です。1つ目は「迷惑」、ごみが迷惑なものであり、その押しつけで問題が起こってしまうという点。2つめは「地球環境・子どもたち」、ごみを通じて地球全体や将来の世代にまで悪影響を及ぼしてしまうという点。そして3つめは「お金」、適切に処理するために意外と多くのお金がかかってもったいないという点です。だから真剣にごみ問題に向かい合い、減らしていかないといけないのです。

ごみ問題を解決するための約束ごと

こうした問題にみなで対処するために、たくさんの法律や約束ごとが整備されており、みなさんにも義務が課せられています。法律そのものの文章は何十ページにもわたり、とても説明しきれるものではありませんが、みなさんの生活にもかかわる主な部分を読んでみたいと思います。
廃棄物処理法 第16条 何人(なんぴと)も,みだりに廃棄物を捨ててはならない

廃棄物処理法は、1970年に制定された、ごみに関して基本になる法律です。その中の16条に、私たちにも関わっている、お経のように意味の深い文があります。なんぴとも(=だれでも)廃棄物を捨ててはいけない、のですが、条件として「みだりに」してはいけないことが加わっています。すなわち、あちこちに勝手に捨てるような不法投棄をしてはいけないということを明記しているものです。ごみは決められたごみ箱へ入れたり、自治体が定める出し方を守ったり、また許可を得て信頼できる業者に頼むことが決められており、勝手に扱うことは禁止されています。
よく道ばたのポイ捨てを禁止する看板に、不法投棄をしたら罰金がいくらといった表示がされることがあります。業者が組織的に不法投棄した場合の罰金は最大3億円と定められており、日本の法律の中でも最高レベルになっています。ちなみに罰則が大きいものについては、今年(2017年)施行された「テロ等準備罪」が適用される対象となりますので、「不法投棄しちゃおうか」などと話し合っているだけで逮捕される可能性もあるので注意してください。
循環型社会形成推進基本法 第12条 国民は・・・・製品をなるべく長期間使用すること、再生品を使用すること、循環資源が分別して回収されることに協力すること等により、・・・適正に循環的な利用が行われることを促進するよう努める

ごみ処理だけでなく、資源循環にも視野を広げて2000年に定められたのが、循環型社会形成推進基本法です。国民の努力義務として、「製品を長く使う」、「再生品を使用する」、「分別リサイクルに協力する」ことなどが明記されています。これには罰則や強制力はありませんが、自治体の呼びかけもここに書かれているように、法律に基づいていることなのです。
大阪市 危険なものや処理が困難なものは回収しません。

ごみは市町村が回収してくれます。それぞれの自治体でも、どのように回収するのかなど、細かく条例で定められて、収集処理が行われています。その約束を守って出す必要があります。
市民がごみとして出したいと困っているものを、全て自治体サービスとして受け入れてくれるわけではなく、「危険なもの」、「処理が困難なもの」は、自治体でも集めませんよ、と宣言がされています。これは大阪市の表現ですが、多くの自治体でも同様のことが記載されています。
なぜなのでしょうか。
それは、自治体のごみ収集は手作業でされており、刃物や爆発性のものなど「危険なもの」が入った場合には、作業員がけがをしてしまうことがあるためです。また、有害物や、灯油等の燃えるものなど、処理が困難なものが入ると、設備が停まってしまうことがあり、他のごみの処理に支障が生じます。ですから、受け入れないと宣言されているのです。
ではどうしたらいいのでしょうか。
刃物でしたら、段ボールとテープでしっかり刃が出ないようにするなど、工夫が必要です。有害物などは、購入した業者のほうが取り扱い方を知っており、そうした事業者に引き取ってもらうことが推奨されています。直接回収はしませんが、どのように出すのかは、自治体の広報やホームページも記載がされていますので、困ったときにはチェックしてみてください。
拡大生産者責任 生産者は、その製造物利用時の責任だけでなく、廃棄・リサイクル段階についても責任を持つ
拡大生産者責任は、特定の法律で定められているわけではありませんが、基本原則として位置づけられています。「拡大」されていない通常の「「生産者責任」は、商品の安全性や機能などについて責任を持つものですが、それに対し、廃棄物の処理やリサイクルの段階まで拡大して責任を持つことが拡大生産者責任です。1990年代に欧州で議論されるようになり、世界に広まってきました。
ごみやリサイクルの問題は、排出する段階でいくらがんばっても解決できないこともたくさんあります。そもそもリサイクル回収しやすいように、キャップやラベル、部品を取り外しやすくしたり、詰め替え品を提供したり、簡易包装の工夫をしたり、製造・販売段階でできる工夫はたくさんあります。日本でも、1995年制定の容器包装リサイクル法では、容器包装製造者がリサイクル料金を負担する義務が盛り込まれましたし、1996年の家電リサイクル法ではメーカーがリサイクルの義務を負うなど、いちはやく法律に盛り込まれています。
このように、ごみやリサイクルの問題は、出す人のマナーだけの話ではなく、メーカーも巻き込んだ形で取り組んでいく制度となっているのです。地球環境の問題や、費用負担の問題は、社会全体で考えて取り組んでいかないと解決できない問題です。ぜひ、ごみの問題も、自分たちだけで悩むのではなく、みなでどう解決できるのか、いっしょに考えていきましょう。

ごみ問題の現状

ごみ問題を解決するために、たくさんの決まり事が作られてきたことを、見てきました。その結果、現在のごみ・リサイクルはどのようになっているのでしょうか。統計をもとにいっしょに確認してみます。
一般廃棄物のリサイクル率まずは、みなさんが出しているごみ(一般廃棄物)のリサイクル率(再生利用率)です。グラフは環境省の統計書からとってきました。

約20年前の1995年には、9.8%と1割もリサイクルされていなかったものが、現在では2割を超える量がリサイクルされるようになっています。この間、容器包装プラスチックが回収されるようになったり、自治体による分別回収も充実してきた時期にあたります。
みなさんが分別へ協力してくださったおかげで、だいぶリサイクル率が高くなってきたわけです。
ペットボトルリサイクル率さて、つづいてはペットボトルのリサイクル率です。PETボトルリサイクル推進協議会が作成したグラフを紹介します。

折れ線グラフがペットボトルのリサイクル率を示しています。途中で線が途切れているのは集計方法が見直されたためですが、大きな違いはありません。約20年前の1997年にはわずか9.8%しかリサイクルされておらず、残りの9割は捨てられている状態でした。それがどんどんリサイクル率が高くなり、直近の2015年には92.4%もリサイクルがされ、廃棄される分はほとんどありません。これはすごいことです。世界を見渡してみても、市民が直接利用するもので、回収率が9割を超えるというのは奇跡的です。
まちを見回してみると、自動販売機の隣には容器の回収箱が用意されていますし、自治体でもペットボトルの分別回収がされています。「ペットボトルはリサイクルするもの」という認識が、ほぼ完璧に近いほど定着しています。ペットボトルだけではなく、アルミ缶・スチール缶、びん、古紙などもリサイクル率が上昇しており、リサイクルが広く定着してきた様子が確認できます。約束が決められると、皆が守るというのは日本人の特徴なのかもしれません。
不法投棄件数と量続いて不法投棄がどうなったのかを、環境省の資料で見てみましょう。約20年前の1995年から、2015年までの不法投棄件数と、不法投棄量の推移です。棒グラフが不法投棄量になります。
不法投棄量をみると、1995年の44.4万トンから徐々に減り続け、2015年には1.9万トンへと、20分の1以下に減りました。不法投棄件数は2000年前後に多くなったものの、近年は量と同様に件数も減り続けています。
まだ小さな規模の不法投棄は起こっているのですが、豊島のような大規模な影響の大きい不法投棄はなくなってきました。これも、法律での罰則が強化され、取り締まりが厳しくなったことが背景にあるそうです。
ダイオキシン大気放出量の推移さて、ごみ焼却炉といえば、以前にダイオキシン類が放出されることで、大きな話題となりました。
世界最強の毒と呼ばれるダイオキシン類について、その排出量がどのように減らされてきたのかを示しています。ダイオキシン問題が盛り上がった1997年には、年間6,800gが発生し、煙突から放出されていました。これは、人間の致死量で換算すると、1億人の日本人全員を殺してしまう量にあたります。
ダイオキシン類の大気放出については、その後焼却炉の対策が急速に進み、おおむね6年で排出が大幅に減少し、2015年時点では43gと100分の1以下にまで削減することができました。焼却炉のすぐ近くに住んでいても、影響の心配がないレベルです。
ごみ量の推移統計の最後に、ごみの発生量についてもみてみましょう。環境省の統計で、40年前の1976年からグラフにしてあります。上の白丸がごみの排出量、下の黒丸が一人あたりのごみ排出量です。
1976年から2000年にかけて、高度経済成長からバブル期を通じて、ごみの量は増える傾向がみられました。2000年は循環型社会形成推進基本法が制定された年ですが、ここからごみの量は急速に減少してきました。一人あたりで換算すると、およそ2割程度が減った成果があがりました。自治体ごとにみると、横浜市や大阪市などでは4割以上も減らしている自治体もあります。
これも、みなさんのごみ減量の努力の成果になるかと思います。すばらしいことです。
さて、ここまでごみに関連する統計を、いろいろな視点でみてきました。リサイクルが進展しているだけでなく、ごみの発生量自体も減少に向かっています。不法投棄も減り、ダイオキシン類など汚染物質の放出も減っているのですから、ごみ問題は着実に解決の方向に動いていると言ってもいいのかもしれません。
ここまでできているのならば、「ごみ問題はもう解決した」と言ってもいいのでしょうか? このままのやり方を続けていれば、もう特別にごみ問題に取り組む必要はないのでしょうか?
もしそうなら、私の話もここで打ち切ってもいいのですが、残念ながら、ごみ問題はそう簡単に解決に向かっているわけではありません。

これからもごみ減量を進めなくてはならない理由

日本では、リサイクル率も高くなり、不法投棄やダイオキシン類の大気放出も減ってきています。自治体によっては4割以上もごみを減らした成果をあげたところもあります。けれども、それでもまだ、ごみを減らし続けないといけない状況があるのです。
少し気が重い話になりますが、しっかり頭の隅に覚えておいてください。ごみ減量を進めないといけない理由は、大きく2つあります。
1つは、ごみ処分場が必要となるためです。
ごみは焼却炉で燃やされて全て消えてしまうわけではなく、重さで15~25%程度の焼却灰が発生します。これを埋め立てる「ごみ処分場」を確保する必要が出てきます。ごみの量が少なくなれば、焼却炉の数を減らすこともできますが、埋め立てた焼却灰は消えてなくなるわけではないので、処分場を減らすことはできません。しかも、埋立がいっぱいになったら、次の処分場を新たに作らないといけないのです。
大阪湾フェニックスセンター関西では、新たに処分場を作ることが困難になっています。反対運動もありますし、水源となる場所では建設することができません。そこで、大阪湾フェニックスセンターという組織をつくって、大阪湾の海面を堤防で囲ってつくられた処分場に埋め立てています。大阪市も、同じように夢洲という海を埋め立てる処分場になります。

ごみ処分場を維持管理することは大変です。焼却灰には、鉛やカドミウムなど有害な重金属だけでなく、ダイオキシン類も高濃度に含まれています。先ほどの統計で、ダイオキシン類の大気中への放出量が大幅に削減されたと言ったばかりなのですが、減ったのは大気放出であり、焼却灰は高濃度のダイオキシンが含まれる状況は続いており、適切な管理をしないと、環境を汚してしまうことになります。このため、ごみ処分場では焼却灰が飛散しないように、土をかぶせたり、雨水で流れ出ないように排水管理を続けています。大阪湾フェニックスセンターの担当の方に話を聞いたところ、安全なレベルまで処分場を閉鎖することができず、およそ100年程度は維持管理を続けないといけないという話です。
ごみが発生する限り、処分場を新たに作り続けなくてはなりません。加えて、それぞれの処分場について維持管理を続けないといけないのですから、これは将来世代の子どもたちにとっては大変な負担です。もともと私たちの生活を便利にするために使って捨てたものです。そのせいで、子どもたちが負担だけを背負うというのは、問題でしょう。子どもたちに恨まれても弁解のしようがありません。
もう一つの理由は、地球環境問題がより深刻になっているためです。ごみの問題は、地球環境問題と大きくつながっています。その地球環境問題が、待ったなしの状態になっているのです。
日本では「地球温暖化」と言われていますが、世界的には幅広く「気候変動」と表現されます。実際に日本でも、気温が高くなったというだけでなく、台風などの暴風雨が激しくなるなど、雨の降り方にも影響が出ます。世界的には、乾燥化が進むために、食料生産が制限される地域も出てきます。海面が上昇して、国全体が水没してしまうことが危惧されるところもあります。
温室効果ガスの排出量推移と目標その原因が温室効果ガスの排出で、その中でも石油や石炭などの化石燃料を燃やしたときに発生する二酸化炭素が主要な原因になります。二酸化炭素は、ごみを燃やすときにも発生します。そもそも、その製品を製造したり輸送する段階でもエネルギーが使われており、そこからも二酸化炭素が排出されています。
このまま温室効果ガスの排出が続くと、世界中で経済や生態系への影響が甚大になることが明らかとなり、世界の国が集まって排出削減をする約束が合意されました。2015年12月に合意がされたパリ協定では、21世紀中の気温上昇を2℃未満に抑えるために、世界全体の温室効果ガス排出量を21世紀中に出さないようにすることを目標に定めています。単純に考えたら、石油や石炭などの化石燃料を、もう使わないようにするということです。
すでに多くのエネルギーを使っている日本の場合には、削減の手本を示す立場にあり、2050年までに温室効果ガスを80%削減することが目標として定めています。2050年といえば、あと30年ちょっとですので、それほど遠い未来の話ではありません。この話を聞いているみなさんも、ほとんどの人は30年後もまだ元気で活躍していると思います。日本人も長生きになってきていますので、たぶんみなさん生き残っているでしょう。そんなちょっと先の話です。
さて、8割減ということがどんなことか考えてみましょう。簡単に言えば、5分の1ということですので、5日間のうち1日だけはエネルギーを使っていいけれど4日間は全く使ってはいけない、というのが5分の1にするということです。それだけ大変な削減を、30年後までには全員が達成していなくてはならないのです。
30年後には、だれもが大幅な削減をした生活をしていることになるでしょう。2050年になった時点で、みなさんのお孫さんたちが、現在の社会の生活を知ったとしたら、どう思うでしょうか。「おじいちゃん、おばあちゃんたち、なんで昔はそんなに無駄にエネルギーを使い、ごみを勝手に捨てていたの?」、と感じるのではないでしょうか。歴史的にみると、これだけたくさんエネルギーを使い、ごみを捨てている時代は他にはありません。現在の生活に慣れてしまっているかもしれませんが、将来に続けられることはない、歴史的にはとても異常な時代であるこということは覚えておいた方がいいかもしれません。
資源利用割合わたしたちがふだん使っているものをつくるためには、資源が必要となります。この資源も、使えばなくなってしまうものが多くあります。そんな貴重な金属資源を並べてみました。このグラフは、金属ごとに、人間が使える資源のうち、歴史的に使ってしまった割合を、青色で示しています。白色は、まだ鉱山に残っている割合です。鉱山にはまだ掘り出されていない金属が残っていますが、いくつかの金属では、すでに掘り出された割合のほうが多くなっています。
日本でも、江戸時代は銀や金が大量に採掘されたのですが、多くの金属を産出して賑わった佐渡金山、石見銀山なども現在では掘り尽くされて、採掘は行われていません。こうした掘り尽くされて捨てられた鉱山や油田が、たくさんあるのです。
新たに鉱山が見つかることもありますが、以前より品質が悪かったり、見つかりにくくなっています。将来世代の子どもたちが、私たちと同じように資源を使って生活をすることはできない状況となっているのです。
みなさんのお手元にも紙があると思います。この紙が何からできているかと言えば、木材です。ここで、世界の森林の分布をみてみましょう。森林の部分が緑で塗られています。

日本に住んでいると、どんな都市でも、周りを見回すと山があり、森が広がっています。けれども、世界的にみると森林が豊かにある地域は限られています。地図で緑の濃いところは、南アメリカのアマゾン、中央アフリカなど限られており、中国北部からインド、中央アジア、アフリカ北部にかけてはほとんど森林がない状態です。アメリカも東海岸沿いだけに森林があり、中西部は白くなっています。雨が少ないために森林が育たないという場所もありますが、人間が森林を切り倒してしまった場所も多くあります。
現在の紙は、古紙も多く使われていますし、植林された木を使って持続可能なかたちで作られているものもあります。紙の全てが悪いというわけではありませんが、気にせずに使っていると、知らず知らずのうちに森林を破壊している場合もあるのです。
ごみを出している以上、どうしても環境へ負荷を与えることになります。それがだめなら、いったいどうしたらいいのでしょうか。
そこで大切になってくるのが、「持続可能」という考え方です。将来世代にわたって、この地球に生きていこうとするのであれば、地球から資源を採りつづけるわけにもいきませんし、自然に戻らない有害なものを出し続けるわけにもいけません。
人間社会を持続可能な形にしていくというのは、なかなか困難なように思えるかもしれませんが、むしろそのほうが自然な形なのです。とてもいいお手本が私たちの周りにあります。
イラストに描かれている自然界はまさに、持続可能な循環ができており、ごみが一切出てこない仕組みになっています。地球上にはたくさんの生き物がいますが、ごみを生み出し続けているのは、人間だけなのです。人間だけが、ごみで困っているのです。

動物にとって不要なふんや死骸は、バクテリアが食べて分解をします。バクテリアが食べたあとに残るものは、植物にとっては貴重な肥料となります。植物もまた、不要になった葉っぱを落としますが、これもバクテリアが分解をしてくれます。
この自然界の中では、だれかが不要物として捨てたものも、他の生き物にとっては必要なものとして利用がされます。全体としては、何も捨てられるものがないのです。
こうしたごみを出さない仕組みのおかげで、自然界は、何万年も、何百万年も、何億年も持続可能な形で維持ができているのです。
逆に人間社会をふりかえってみると、この速度で森林を破壊し、資源を使っていくと、あと100年も維持できない可能性もあるといった、未来が見えない状態にもなってます。しっかり、自然界を見習って、何が問題なのかを見極めていく必要があります。自分が出すごみをゼロにするというのではなく、事業者や農業などの間で循環させることを考えながら、社会全体でごみをなくせるかどうかが、ポイントなのです。

私たちのごみを分析する

ごみの組成(大阪市)これからごみを減らそうと考える人にとって、とても役に立つグラフをを紹介します。これは、みなさんが出しているごみを分析した結果で、家庭ごみの袋の中にどんなものが含まれているのかを重量割合で示しています。ここには、大阪市が調査した結果を示していますが、全国の自治体で調査がされていることがありますので、探してみてください。

私も、ごみ袋の中身を取り出して、何が入っているのかを分析する作業に、何度か参加したり企画したりしたことがあります。リサイクルできる缶やびんが入っていたり、まだ着られる服が入っていたり、なかなか考えさせられるものです。暑い時期にごみ調査をするときには、生ごみもいい感じで香りを出すようになってきます。余談になりましたが、そうしたごみの楽しい話は、また機会があったら、ゆっくりさせていただきます。
さてグラフを眺めてみましょう。ここでは一番大きな割合を占めているのは「厨芥(ちゅうかい)」と書かれております、いわゆる「生ごみ」で、全体の33%を占めています。続いて紙類の32%、プラスチック類の12%が大きいのがわかります。こうした大きな割合を占めている部分は、少し工夫するだけで減らせる可能性も大きいので重点的にみていきましょう。
手つかずのごみさて、ここに食べ物がたくさん並んだ写真を紹介しますが、いったい何かわかりますか。野菜や果物だけでなく、焼きそば、魚、豆腐、加工食品などもそろっており、スーパーが開けそうな感じです。

実はこれは、ごみの展開調査の中でみつかった、手つかずのまま捨てられたごみたちです。袋をあけられることもなく、そのまま捨てられてしまったものを、160世帯分のごみから取り出してみると、これだけ見つかったものです。家で保管している間に賞味期限切れになったり、食べきれないほどたくさん買ってしまって余らせたのかもしれません。いずれにせよ、お金を出して買ったのに捨ててしまうのはもったいない話です。また、世界では数億人が栄養失調で困っているという一方で、日本人がこのように食べ物を粗末にすることは許されないでしょう。
先ほどのグラフを見ると、こうした手つかずのまま捨てられた食品が、ごみ全体の6%弱程度もあることになります。これに加えて、食事を作りすぎたことによって発生した、食べ残しも6%程度あります。食べられるものが大量に捨てられているのが日本の現実なのです。
手つかずなど、自分で買ってきたものを捨てているという点で、家計にとって損になっていることですが、家庭の中の話でとどまることではありません。日本全体で集計をしてみると、残飯等により捨てられている食品は、販売価格換算で11.1兆円にも達します。これは、農業・水産業での総生産額12.4兆円に匹敵する金額です。一所懸命に農業や漁業を通じて私たちの食料を生産してくれている人に、申し訳ないような、無駄なことを私たちはしているのです。
そんな生ごみをなるべく減らしていくために、新しい呼びかけ運動も始まっています。「3キリ」として推奨されているもので、食材の「使い切り」、料理の「食べきり」、そして廃棄時の「水切り」を徹底することで、生ごみを減らすことが呼びかけられています。いずれも最後に「きり」ついているので、「3キリ」運動です。
生ごみは家庭のみで発生するだけでなく、スーパーなどの小売店からも多く売れ残りとして発生します。よく閉店間際のスーパーで、値引きのシールが貼られているのを見かけることがあると思います。売れ残ってしまっては、廃棄せざるを得ないということで、値引きをしてでも消費者に買ってもらおうとしているものです。ごみを減らそうと考えるなら、ここはなるべく積極的に値引きされた商品を選んで購入しましょう。新鮮さは少し失われているのかもしれませんが、十分賞味期限前ですし、早めに家で調理をするのであれば何ら問題はありません。値引きがされてお得にもなりますし、ぜひ協力をしていただければ幸いです。
さて、いま「賞味期限」という言葉が出ました。賞味期限が切れてしまうと、食べられなくなるイメージがありますが、あくまでも「味が落ちるかもしれない」という目安であり、決して期限が切れたからすぐに食べられなくなるわけではありません。しっかり自分の鼻と目を使って確かめることができれば、賞味期限は多少越えていても食べられることが多々あります。賞味期限が切れたからといって、すぐ捨ててしまうのではなく、一度確認をしてみてください。
また同じような表現で「消費期限」というものもあります。こちらはすぐに痛みやすい食品につけられているもので、こちらはなるべく期限が切れたら食べないほうが望ましいです。賞味期限と消費期限は区別して扱うようにしてください。
スーパー等で残った食材を減らす取り組みとして、「フードバンク」があります。賞味期限や消費期限は残っている食材などを、福祉施設やホームレスの人など、必要としている人に届けようという取り組みで、その間つなぎをしているのが「フードバンク」です。日本でも、市民組織として運営されているところが複数あります。フランスでは、フードバンクの活用などを想定して、スーパーなどで売れ残った食材を廃棄することを禁止する法律が施行されています。
また生ごみは、もともとが動植物のものですので、発酵させて肥料として循環利用することもできます。これは自然界そのもののリサイクルと同じですので、とても可能性があります。
生ごみを容器に入れて、適切にかきまぜることで、いい肥料をつくることができます。庭に置くだけでなく、ベランダや、台所に設置することもでき、「コンポスト」と呼ばれています。専用のコンポスト装置が販売されていますし、段ボール箱で工夫をしてコンポストを作っているグループもあります。適切に面倒を見ることができれば、臭いは虫の発生もほとんどなく、肥料に変えていくことができます。こうしてできた肥料を使って、プランターや庭で野菜を育てると、これもまたよく育ちます。食べ物の循環を体験することができ、また取れたての野菜を食べることができ、楽しみがいのあるごみ減量活動です。
生ごみはそのほかに、集めて豚などの飼料にすることもできますし、プラントで処理をして都市ガスと同じメタンを生み出すこともできます。メタン発酵でのエネルギー回収は、日本ではあまりされていませんが、ヨーロッパではかなり普及しています。
ただし生ごみを処理する方法でも、電気を使って乾燥させるだけの生ごみ処理機の場合には、余計な電気を多く使ってしまうために問題があります。エネルギー消費量で換算すると、電気式の生ごみ処理機を使うくらいなら、家庭ごみに出して燃やした方が、環境にいいという評価が出ています。自治体では、電気式生ごみ処理機に補助金がつけられる場合もありますが、おすすめしません。
続いて大きな割合となっているのが「紙類」になり、全体の32%、およそ3分の1を占めています。紙といっても、ティッシュペーパーなど捨てる以外に方法がないものもありますが、グラフの中には、「新聞紙・雑誌・段ボールなど」のリサイクル対象物が5%も含まれています。適切に選別することで、リサイクルができ、ごみを減量することにつながります。実際に、道ばたに出されているごみ袋を外から眺めてみても、新聞紙がそのまま入っていたりする場合もときどき見かけます。リサイクルできるのにもったいない話です。
また、最近古紙リサイクルの対象として注目がされている「雑がみ」についても8%程度が含まれています。「雑がみ」とは、新聞紙・雑誌・段ボールなど以前から古紙として回収されていたもの以外の、雑多な紙のことで、包装紙、紙袋、封筒、ノート、チラシなどが含まれます。これらも古紙の材料として利用していくことができます。
ただし、雑多な紙の中には、紙のように思えても処理困難なものがたくさんあり、区別するために自治体では、ポスターなどが用意されて注意が呼びかけられています。たとえば、紙おむつは「紙」と名前がついていますが、実際には紙はほとんど使われておらず、吸水性のプラスチックが大部分なので、リサイクルできません。臭いや汚れがついたもの、封筒の透明なプラスチックの窓も、受けれない自治体が多くあります。何が対象外なのかは、自治体によって異なっている場合がありますので、これを確認した上で、資源としての雑がみ回収に協力をしてください。
あとはプラスチックで12%を占めています。その大部分にあたる8%はプラスチック製容器包装ですので、きれいないものは洗ってリサイクルが可能です。まだまだ減らす余地があると考えられるでしょう。
こうしたリサイクル可能なものを足し合わせてみるだけでも、半分程度は削減することができます。ごみを減らそう、という呼びかけだけだと行き詰まってしまいがちでも、数値で「まだここが削減できる」と示されると、可能性が見えてくるのではないでしょうか。
わが家は4人家族ですが、出すごみは10リットル程度の小袋で、週1袋程度になります。雑がみや容器包装プラスチックを分けていくと、だいぶごみの体積を減らすことができます。さらに庭に生ごみを埋めているため、この分も減らすことができ、結果的に小袋ひとつだけですんでいます。生ごみ、紙、プラスチックをうまく削減できたら、ごみは大幅に減らせます。

 後編に続く

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