ひのでやエコライフ研究所

1999年4月9日作成
1999年4月12日一部修正

1 「ひのでやエコライフ研究所」とは


 家庭での環境問題の取り組みを支援することを目的に1999年3月に設立された個人事業です。家庭で省エネやごみ減量等をするにあたって有効な取り組みの情報を収集・提供するほか、「なぜ家庭で取り組みが進まないのか」といった社会心理的視点を重視し、実際に環境負荷の少ないライフスタイルを定着させることを目的にしています。

2 事業化の経緯

 環境問題においては、私たちの大量消費型ライフスタイルの変更が重要となっています。温暖化防止京都会議以降の政策においても、家庭でどれだけ省エネ型生活を選択できるかが大きなポイントとなっています。しかし、現状では「やりましょう」と呼びかける以上のことはできておらず、空振りに終わる可能性が大きいと危惧されます。

 社会心理学の分野では、「頭ではわかっていても行動できない」といった仕組みの分析が進んでおり、行動を引き出すために何が必要なのかが徐々にわかってきています。市民向けに環境問題を働きかけていくにあたっては、理念のみでなく、こうした構造をふまえた上で効果的な対策を講じていく必要があると考えられます。

 私自身、京都大学院で、環境配慮型ライフスタイルに関して研究を行ってきました。しかし研究として完成するまでには時間がかかり、世の中に働きかけるにあたってはどうしても遅れが生じてしまいます。またこのテーマに関しては、学問としてではなく、実績としてライフスタイルを変えることの方が重要である思われます。こうした視点から事業として世の中に問うことを思い立ちました。

 同じような取り組みとして、企業向けに省エネルギーをアドバイスする事業は、ESCO事業として成り立っています。家庭向けに同じように取り組めるとは思いませんし、現状で需要があるのかすらわかりませんが、将来的には重要なノウハウになると思います。このため、事業としてどこまで成り立ちうるのか開発を進めていくと同時に、研究としても客観的評価ができるような形で実績を残し、将来活用するにあたっての基盤として活用してもらうことを重視しています。

3 事業概要

事業ベースで行っているもの

環境家計簿の個人向け通信簿作成

 家庭で消費するエネルギーや、家庭から排出されるごみを、自分たちでチェックし、どれだけ地球に負担をかけているのか実感してみようという、環境家計簿が全国で取り組まれています。現状では家庭で自主的に取り組んでそのまま放置されるところが多いのですが、これでは苦労ばかり多く、たぶん広まることはないかもしれません。そこで全国平均と比べて5段階評価を行って示したり、何が省エネのポイントであるのか、家庭ごとにあったアドバイスを付記した「通信簿(別紙)」を作成して配布しています。

 実績: おおさかパルコープ、京都市(気候ネットワーク)、尼崎市、静岡市

■環境家計簿のマネージメント

 「取り組むことによって省エネが達成できた」と喜んでもらい、口伝えで広がっていくような環境家計簿となるように工夫して進めています。

 実績: おおさかパルコープ、気候ネットワーク(協力)

今年中に事業化するために開発を進めているもの

■家庭向けのコミュニケーションツールの作成

 家族で話し合いをしたり、子供といっしょに遊ぶことを支援するツールを開発し、環境家計簿と同時に提供してみます。研究では家庭内のコミュニケーションが、エネルギー消費量に与える影響が確認されており、その効果を調べて改善していきます。

■家庭向けの省エネアドバイスシステムの開発

 環境対策等についてのデータベースを元に、各家庭にとって最も有効と考えられるアドバイスを提供できるコンピュータプログラムを作成します。

■小学校向けの環境家計簿プログラム

 家庭において子供と親とのコミュニケーションが大きな割合を占めており、学校からのアプローチによって家庭の状態が変化することが考えられます。学校でいつも子供が勉強についての通信簿をもらっているのですが、逆に家庭(親)の省エネ度についての通信簿が配布されることで、親子のいい関係ができるのではないかと期待しています。

事業とは別に進めている研究・活動

■家庭内において環境行動が導かれるプロセスの研究

 個人の環境行動が導かれるプロセスについては研究が進められていますが、社会的には家庭という単位が重要であると思われます。家庭内の環境問題に関するコミュニケーションの実態や、省エネ行動定着のプロセス等について、環境家計簿に合わせて検討を行います。

■環境教育の効果指標の検討

 市民啓発だけでは、エネルギー消費量の削減になりません。しかし「効果÷費用」で啓発の意味がないとしてしまうのは早計です。「何かのきっかけがあれば行動を始められる」というところまで市民の意識を上げることは非常に重要であって、これを適切に評価する枠組みが重要であると考えます。どれだけ市民の意識が向上しているのか、把握できるような調査方法の開発を進めます。

■家庭での省エネ情報の集約

 エネルギー消費の実態、家電機器の特徴と省エネのポイント、省エネ取り組み項目とその行動の難易度、等について情報を収集して、情報集として冊子にしていくことを考えています。

■省エネアドバイザー制度の検討

 各種の家庭問題についてカウンセラーがいるように、省エネについても家庭の状況に合わせて相談に乗れるアドバイザーが必要になってくると思われます。そのためのノウハウを集めて、将来的には各自治体で運営していけるような制度にしていきたいと考えています。


■市民向けの情報の提供

 インターネットを通じて家庭で感じるちょっとした疑問レベルの話から、気軽に読める情報を毎日提供しています。世の中に出回っている省エネ情報については勘違いも多く、チェックしながら正しい情報を流すように気をつけています。

 また、家庭でできる省エネのノウハウについて、市民向けとしてブックレットの作成を行いました。



 実績: http://www2s.biglobe.ne.jp/~y_suzuki/one/
(1999/4/1~)

    CASA編:温暖化を防ぐ快適生活、かもがわブックレット118、1998

4 省エネアドバイスシステムの全体構想

 現在出回っている一般的な省エネ情報では、なかなか家庭のエネルギー消費を削減できないのが実態です。今後の情報化によって、より個別の省エネアドバイスが容易になってくると考えられ、そのシステム整備を視野に入れて情報・ノウハウの整理を進めていきたいと考えています。
 こうした「確実に家庭でエネルギー消費が削減できるプログラム」を作成し、提供していくことを事業の第一段階として考えています。

省エネアドバイスプログラム

5 研究所の実態

 まだ開始したばかりで体制が整っていませんが、基本的に下宿でぼちぼちと進めていくことになりそうです。研究員として申し出があったのは現在3名ですが、従業員とするのではなく、市民団体的に活動を進めていく計画です。
 (注)以上の内容は、1999年4月12日現在の計画です。今後変更もあり得ます。