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省エネのイメージ

 省エネは、1970年代のオイルショックから、国を挙げて呼びかけられてきました。少し不便であっても、やむを得ない事情があり、一人ひとりががんばって取り組みましょうという雰囲気です。

 古くは、太平洋戦争の頃も、石油資源が不足し、「お国のため」として苦々しいがまんが重ねられました。

 現在は地球環境問題との関係で、なるべくエネルギーに頼らない生活を求められています。この場合には、石油もいずれなくなるわけですから、「ここまで減らしたら大丈夫」という基準が明確にあるわけではなく、「減らすことができれば、ゼロになるまで」省エネを求められ続けることになるのか、という心配も生まれてきます。

 そんな「がまんしないといけない」「不便な生活を余儀なくされる」「昔の生活に戻らないといけない」といったイメージは多かれ少なかれ頭に浮かんでくるかもしれません。

 また、現在は省エネのことを全く考えずに生活している人も少なく、LEDをつけたり、省エネ家電を選んだり、つけっぱなし似注意したり、大部分の人が、すでに省エネに配慮して生活しているのも事実です。ただ、そうした取り組みについて、「よく取り組んでくださいました、ありがとう」と褒めてもらえるわけでもなく、「もっと取り組みましょう」と言われ続けるのも、負担感を感じてしまう理由の一つなのかもしれません。

 そうなると、「面倒くさい」「自分だけやっても意味がない」といったいいわけに近い気持ちが生まれてしまうのも、当然のことかと思います。

 そんなイメージでとらえられがちな「省エネ」ですが、現在求められている「効果的な省エネ」はそうしたものではありません。世界的にみると、日本で行われているような「省エネ」は珍しい部類に入り、むしろ別の考え方で「省エネ」が進められています。

原発停止の夏と冬

 2011年3月の東日本大震災では、福島第一原子力発電所が放射能汚染事故を引き起こしたことを受けて、全国の原子力発電所の安全確認のために多くが停止したままとなったことから、夏と冬に発電量が不足し、全国的に節電が呼びかけられました。

 行政機関だけでなく、駅やレストラン、店舗でも冷暖房温度を控えめに設定し、照明も間引きなどにより大きく減らされました。消費者向けのサービスとして提供している冷暖房や照明を減らすことは、今までは考えられなかったことですが、「節電にご協力ください」との呼びかけポスターとともに行うことで、反発を招くというより、逆に社会的に協力的なお店というイメージも伴っていました。

 社会全体で取り組んでいることで、だれもが自然と取り組むようになり、おおむね1割程度の節電が達成されたと評価されています。

 このときに、「がまんして」「不便だと思いながら」した部分は多少あったのかもしれませんが、呼びかけの中で「無理をしないように」という配慮がされた点については大きく評価できることです。冬は寒くて風邪を引くことがないよう、夏は熱中症にならないよう、特に高齢者を対象に暑いときには冷房を、寒いときには暖房をしっかりつけるよう呼びかけがされ、健康を重視した呼びかけとなりました。

 よもすれば、冷暖房を使わないストイックな節電ばかりがもてはやされそうな中で、むしろ「エネルギーを使わなくても暖かく・涼しく過ごす」方法が広まっていきました。

 また、LEDや省エネ機器導入など、本来の省エネ方策が注目されたことも大切な点です。

 原子力発電所がなくても、電力不足で停電が起こることはなくなったため、節電をしていこうという声は小さくなってきましたが、省エネ機器導入もあって、以前とくらべて1割以上の節電ができている成果は定着しています。

 実は、この原発事故後の省エネにみられた考え方の方向で、制度として定着させていくことは、本来の「省エネ」になります。決して「無理する」ことではなく、無駄を探し、工夫をして取り組んでいくことができれば、太陽光などの再生可能エネルギーの拡大とあわせて、いずれ持続可能なエネルギー利用が可能となる解決点が見つかるはずです。

 あまり「省エネ」が言われなくなったことで、また「省エネ」の言葉が昔のイメージに戻りつつあるのが心配な点です。

海外の省エネ

 欧米だけでなく、途上国でも省エネが推進されているのですが、その政策手法はいずれも、「がまんする」ことなど念頭にはなく、日本の考え方とは大きく違うものです。日本だけが独特な方向で、省エネに行き詰まっていた面もあります。

 海外でよく使われるのは「エネルギー効率(energy efficiency)」という言葉で、同じ利用であっても効率よくやっていこうという面を強調しています。

 日本でも、省エネ機器や住宅の断熱化などに、補助金が出ることもありますが、地域や年度ごとに制度が変わって、本気で省エネを推進しようとしているのか疑いたくなることがあります。予算が不足している中でやりくりせざるを得ない状況は、世界中どこでも同じなのでしょうが、海外では安定的に導入推進ができるように、電気代やガス代に上乗せをしたり、むしろ電力会社などに家庭の省エネ実施を義務化して、有効な対策を競争させたりする取り組みもされています。

 むしろ、日本で言う「省エネ」が営業の糧になっているという位置づけで、競争しあいながら進められています。

 省エネをしない国は滅びる時代です。日本も、置いてけぼりを食らわないように、制度的な舵取りが求められます。


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Last-modified: 2017-01-09 (月) 15:41:39, by 有限会社ひのでやエコライフ研究所